- 他人の経験から学び、多面的な視点で物事を見たい
- 思いがけない発見をしたい
- 直感や経験ではなく、客観的な情報や数値で判断したい
このような思いがある人は、ビジネスでリサーチ・データ活用について学習することをおすすめします。また、急激なデジタル化により、誰もが日常の至るところでデータを活用した意思決定を行っているため、データ活用は生活と切っても切れないものとなっています。
本記事では、マーケティングやデータ活用を始めたいと思う人の
- データとの向き合い方
- データ分析の基本
- データを活用した意思決定
の第一歩が分かります。
専門家ではなく、初心者としての第一歩を紹介します。
私自身もマーケティングの専門家ではないですが、ビジネスマンとして最低限のマーケティングの知識を身につけ、業務や生活に活かしたいという思いで学びました。
私が学習した、わかりやすさ・シンプルさを追求した書籍の中から、初学者目線でわかりやすくすぐに活用できると感じた部分を抽出しお届けします。
リサーチやデータ分析は誰でもできる。
大前提として、誰にでもできると強調しておきます。
スキルに差はあれど、やればできるものです。
脳の大原則として、ある脳機能を「使えば強まり、使わなければ衰える」というものがありますが、リサーチについても、やればスキルが向上すると感じました。
「やってみたいけど難しそう」、「自分には習得できないスキル」という類のものではありません。私達がオンラインで店を予約したり、商品を購入する際に、ネット上の評価や口コミを頼りに意思決定をしています。あまり難しく考えないようにしましょう。
必要な知識を身に着け、他の人より少し効率的に高精度に行うための手段と方法を知ることが第一歩です。
誰にもリサーチやデータ分析スキルが必要な理由
リサーチスキルを身につけるべき理由を示します。闇雲に学習するのではなく、目的を持って取り組むことが成長速度を上げるポイントです。
誰もが日常で行う必要がある
日常で無意識のリサーチは様々な場面で行われています。
- 評判が良くてなるべく安い美容室に行きたい。
- 美味しいラーメン屋を見つけたい。
- SNSで話題のデートスポットに
- おもしろい映画を見たい
例を上げるときりがないですが、何か行動を起こそうとするときに、ネット上で評判を調べたり、価格を比較する機会は当たり前になっています。
このように、ネットを活用した情報収集や比較検討は日常で無数に行われています。したがって、リサーチのスキルを身につけることは、充実した生活をくるための、ごく一般的なスキルとして重要になっていると言えます。
加速するデータの蓄積
急激なデジタル化の進展とともに、データ流通量は拡大しています。
SNS・IoTなどの発展により、あらゆる活動がデータ化されているのは多くの人の実感するところだと思います。購入履歴や視聴履歴に基づき、関心のある広告が提示されるなんてことには、すでになんの違和感も恐怖感もありません。
2019年の統計によると、日本のデータ流通量は2014年から2019年の5年間で約5倍に増加しており、今後も強い上昇傾向となると予想されています。
データを用いた活動も一層拡大されることが予想されるので、データを扱うスキルの有無が年々重要になっていくと言えます。今は必要ではないと感じる人でも、5年後、10年後にはどうでしょうか。
パソコンを扱えない高齢者、プログラミングができない上司のように、会社の中で「化石」として扱われる未来もあるかもしれません。
「我が国のブロードバンド契約者の総トラヒック (参照:総務省HP)」
GAFAMの存在
GAFAMとは、Google, Apple, Facebook(メタ), Amazon, Microsoft のデジタルプラットフォームを提供する凄まじい影響力をもつ5社の総称です。私達もこれらの多くのサービスを利用し、データを提供しています。
これらの会社が莫大なデータを収集し意思決定を行い(データ・ドリブン)、大きな利益を上げていることから、データを活用する重要性が伺えます。データを活用することで、利益の向上を狙うことができます。
あまりの強力さに、世界中のデータ・ドリブン・マーケティングの世界もGAFAMが支配するのではと囁かれていたりします。
データ・ドリブンとは、データ分析に基づいた意思決定のことです。
シンプルなデータ活用から始める
ビッグデータの活用は、専門家レベルの話ですので、まずは身近なデータ活用から行いましょう。
日々の活動の中にデータ分析やデータ活用を取り入れ、データ活用の体感、データリテラシーの向上を目指すことが重要です。
リサーチ・データ分析の4つのスキル
まずは、ポイントを抑えましょう。リサーチ・データ分析の重要なスキルは大きく4つです。
- 情報収集力
- 情報分析力
- 情報解釈力
- 情報活用力
情報収集力
さまざまな情報ソースやリサーチ方法を、目的に応じて使い分ける力。
ex. Google検索でわからなかったら、図書館で本を探す。現場に実際に行ってみる。
情報分析力
収集した情報を、わかりやすい形に整理し分析する。そして、目的(ビジネス)の意思決定につながる情報へ変換する力。
ex. グラフ化する、一覧表にする。
情報解釈力
収集・分析した情報を、正しく意味のある形で解釈する力。(仮説を用意しておくと良い。)
ex. データの根拠や関連性を探る。時間帯と来客数の関係性を見出す。(夏より冬の方が商品が売れるかもしれない。といった仮説)
情報活用力
収集・分析・解釈した情報を、意思決定やアクションにつなげる力。
ex. 時期と販売数の関係性をもとに、仕入れ数量を決定する。
効果的で効率的な7ステップ
上司に「商品〇〇を販売するためのデータ分析をして」と言われたら何から始めますか?
過去の類似商品のデータを探す、市場規模を調べる、商品の特徴を精査する。さまざまなことが頭に浮かび、早速なにかに取り組みたい気持ちになるかもしれませんが、それは危険です。
一度作業を始めると、うまく行かなくても1からやり直すという判断を下すことは難しい上に、作業をしていること自体に「安心感」を感じてしまします。
これは私自身もあてはまることですが、これまで作業がもったいないような気持ちになって、なんとか軌道修正で済ませたいと思ってしまうものです。
リサーチを開始したあとに柔軟に修正することは難しいため、リサーチの手順は非常に重要なポイントになります。以下7ステップを紹介します。ステップごとに、重要なポイントを可能な限り記載しています。
-
- 順番の決定
- 目的の設定
- 調査企画の設計
- データ収集
- 分析・解釈
- アウトプット作成
- アクション
STEP1.順番の決定
インパクトの大きいものを選定し、リサーチ対象の優先順位を決める。やりやすいものからではだめです。
STEP2.目的の設定
リサーチの目的を明確にする。「どんな情報を収集・分析すればよいかということ=リサーチの範囲」を明確にしましょう。
STEP3.調査企画の設定
調査企画の設計 = リサーチの要素を考えて整理する。(課題を整理する)
調べようと思ったら要素は限りなくあるため、絞る必要があります。3C分析、SWOT分析・STP分析などのフレームワークが有効。
人数、金、情報、技術力、流通量、顧客は誰、競合の強みなど
この中で、シンプルで使いやすい3C分析を推奨します。このとき、顧客・競合・自社をどの順番で分析するかというと以下のとおりです。サイクルを回して、強み弱みを再評価しましょう。
①自社 → ②市場・顧客 → ③競合 → ④自社
どの要素を突き詰めればよいのかわかる状態にしましょう。
STEP4.データ収集
突き詰める要素が明確になれば、実際にデータを集めます。。手法はインターネットや書籍、インタビュー、アンケートなど様々ですが、共通する注意点を2つ上げておきます。
そして、データの収集の際に役に立ついくつかのポイントを紹介します。
リサーチの目的を忘れない
最終的に獲得しなければいけない情報は何かを忘れてはいけません。検索中に意外と頭から抜け落ちるので注意です。
数字やグラフには5W1H
数字やグラフでは5W1Hに注意しましょう。極端な例をあげると、インターネット上のアンケートで、「スマートフォンを利用しているか」という項目があれば、アナログ調査の結果よりも利用率が高くなります。こうした数字の調整は少なからず行われます。
「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」という言葉を頭の片隅に残し、5W1Hに注意しましょう。
データの収集の際に役に立つポイント 初心者向け
ここからは、データの収集の際に役に立ついくつかのポイントを紹介します。有効な手法が多く紹介されていましたが、初学者の私が特にわかりやすいと感じたものを厳選しました。関心がありましたら、最後の紹介する書籍をチェックしてみてください。
消費者の購買プロセスに関するメンタルモデル
消費者の購買行動を把握するためのメンタルモデルはさまざまなものがありますが、その中から、AISCEAS というものを紹介します。AISCEASでは、消費者の購入プロセスはこのように考えられています。
A : attention, I : interest, S : search, C : comparison, E : examination, A : action S :share
具体的に、ワイヤレスイヤホンを購入した例をあげましょう。
友人にワイヤレスイヤホンAを勧められた。(認知)
よく音楽を聞くが、コードが邪魔になることが多かったので気になった。(興味・関心)
Amazonでワイヤレスイヤホンを検索し、気になるものをピックアップした。(検索)
Youtubeで動画を視聴して、性能や値段をもとにどのイヤホンを買うか考えた。(比較)
値段と便利さが見合うと考えた。(検討)
ネットショップで注文した。(購買)
ネットでレビューを残し、SNSで使用感をつぶやいた。(共有)
実際に当てはめていると、プロセスに違和感を感じませんね。自分の商品が、これらのどの段階で止まってしまうのかを明確にするリサーチは非常に有効です。
そもそも認知されていないなら、広告方法を変更。比較されているが購入されないなら、値段や性能の見直しが行えます。
仮説が鍵を握る
ここで、仮説の重要性を解説しておきます。仮説なき調査は失敗すると言われるほど大切な要素です。
仮説の分類
一般的に仮説は2種類に分けることができます。それは現状仮説と戦略仮説です。現状仮説は文字通り、現在の状態を仮定し、戦略仮説は、ある戦略Aを取った際の結果を仮定するものです。わかりやすく言えば、現在or未来 どちらの仮説を考えるのかを明確にすればよいのです。
仮説を構築するために
仮説力を高めるには 「インプット量 ✕ 質」が重要です。強調したいのは、量だけでも質だけでも不十分だという点です。
量としては、関連書籍3冊程度を読むと、その分野に対して多角的な視点を得られます。
また、質という点では、「実際に体験する」ことが重要です。人の心を動かすもの・場所・映画などには直接触れてみましょう。五感を使って情報収集をすると、潜在意識にも情報を蓄積できるため、直感力や想像力を鍛えられます。
アンケートを用いて「推奨度」を測ろう。
アンケートに「この商品をおすすめできますか」という問があり、回答方法は 0〜10の11段階評価としたとき、アンケート結果による「推奨度」はどう評価すればよいでしょうか。11段階評価を行う回答者の気持ちになると、推奨度と数値を一致させるのは難しそうです。
実はこれには明確な手法が確立されており、NPSという指標があります。この指標に基づくと、
- 10〜9点 : 推奨者
- 8〜7点 : 中立者
- 6〜0点 : 批判者
と位置づけています。最大の特徴はなんと言っても、単なるアンケートの数字ではなく、「推奨度のデータ」として収集できる点です。目的に正確に捉えて、アクションへとつながる良いデータとして収集できます。
アンケートを行う機会があれば、11段階評価/NPSを用いてみてはいかがでしょうか。
STEP5.分析・解釈
データ収集と同様にさまざまな手法がありますが、絶対に抑えなければならない5つのポイントがあるので紹介します。
また、分析で重要なことは一言でいうと「意思決定やアクションに繋がるアウトプットを作ること」と言えます。このことを頭にいれつつ読んでいただければと思います。
- 分析目的を明確にする
- 比較軸で考える
- 構造・構成を考える
- 関係性に注目する
- 分布を確認する
1.分析目的を明確にする
「何を明らかにして、どのようなアクションにつなげたいのか」を明確にしましょう。STEP4でも述べたように、分析中に「目的」を見失わないように注意しましょう。
2.比較軸で考える
「何と何を比較するのか」を決めましょう。これは分析視点の中でも最重要です。
給料の高い企業に勤めたいのか、残業が少ない企業に勤めたいのか、明確にしていなければ志望するの企業の比較ができません。
また、情報量が多ければ比較可能な項目が増えるので、分析の精度を高めることができます。
3.構造・構成を考える
分かりやすい例を挙げると、購入者属性の分類です。年齢や性別ごとに購入者の層を構造化します。構造別のデータに分けることで、ターゲット層の選定や、アプローチ方法の決定に結びつきます。
「若者向けの商品が、思いがけず高齢者に人気」というデータが得られれば、ターゲットを変更し、それに伴った広告・宣伝を企画することができます。
4.関係性に注目する
深い分析を行う際には、それぞれの数字が与えあう関係性を確認すべき場合があります。関係性は、
- 相関関係
- 因果関係
- 単なる偶然
の3つに分けることができます。単なる偶然は除き、上の2つについて説明します。
相関関係
身長が高いほど体重が重くなるといった、2つの項目の関連性のことです。注意すべき点は、ただの事実で終わらせずに、その理由まで追求することです。
国語と英語の点数の相関関係について考えます。小学校のテストでこれらの相関が見られたならば、「国語と英語はともに語彙量・文法理解・読解力などが重要という点が共通しているので成績に相関があるのだろう」という発見まで突き詰めましょう。
因果関係
相関関係と似ているようですが、「Aが原因となってBという結果が起きた」という関係です。
Bという結果の対策として、Aにアプローチをするというアクションにつなげることができるため、因果関係の発見は、課題解決において重要です。
分布を確認する
平均値、代表値だけでは、データの本質を捉えられないことがあります。分布や散布度を確認してデータの本質を掴みましょう。
STEP6.アウトプット作成
データの分析・解釈とセットで発生するのが「アウトプット作成」です。ポイントは「アクションにつなげるために、アウトプットをシンプルでわかりやすくすること」が大切です。
そのための方法としては以下の4つを紹介します。
- 「誰に」伝えるかを明確に
- 「何を」伝えるかを明確に
- 「どのように」伝えるかを明確に
- 作成作業は徹底的に効率化する
相手の立場とリテラシーを考慮せよ
ポイントとしては、相手の立場(管理職か顧客かなど)、「伝達内容に対するリテラシー」を考えましょう。営業担当者相手に、機械の専門用語を多用しては正確に情報を伝えられませんよね。
キーメッセージと読後感
内容については以下の4つのポイントを抑えましょう。
- 伝達目的
- 伝達項目
- キーメッセージ
- 読後感
アウトプットにこれらの内容が含まれているのか確認しましょう。このなかで特に重要視したいのは「キーメッセージ」と「読後感」です。キーメッセージとは最も伝えたいメッセージ、読後感は受け取り手に一番感じてほしい気分です。
15ページ以内にまとめよ
人間の集中力を考えると、プレゼンの資料は15ページ以内が妥当です。
伝達目的にあったグラフを用いて、明快なアウトプットを心がけましょう。
STEP7.アクションにつなげる
これまで、アクションにつながるリサーチの方法を紹介して来ました。これが最後のステップですがポイントは単純です。
重要なのは「意思決定者を巻き込む」ことです。アクションにつながらないリサーチはこれができていないことが多いようです。
7つのSTEPのまとめ
ステップを7つに分けて手法やポイントを紹介しました。一貫して大切なことを一言でいうと、「分かること」ではなく「アクションにつなげること」が重要だということです。なにか一つだけ覚えるとしたら、このひとことを覚えておいてください。
そして、これらの7ステップを実行するためには「何が目的なのか」を常に頭の片隅においておくことが必要です。
まとめ
本記事の内容を再度まとめておきます。こちらで内容をご確認ください。
- 急速なデジタル化に伴い、誰もがデータを扱いながら生活しているため、データを扱うスキルの重要性は今後も上がることが予想される。
- リサーチにおいて重要なスキルは「収集力」「分析力」「解釈力」「活用力」
- 「7つのステップ」を意識して効率的にリサーチを行おう。
- リサーチ前に仮説を建てることで、リサーチの効果を向上させることができる。
- 数字を扱うときは5W1Hを確認しよう。
- リサーチの目的を明確にし、アクションにつなげることが重要
「調べる」と一言で表すことができますが、その目的や手法は多種多様です。本記事で紹介したものは、リサーチやデータ活用のごく一部分でしかありません。しかし、日常的にデータを活用しているはずのビジネスマンであっても、これらの内容を実践できている人はごく数%程度ではないでしょうか。リサーチスキルはビジネスマンとして一流になるために、重要なスキルだと考えますので、興味が湧いた方はぜひ学習してください。
本記事の内容は、以下の書籍で学習したことをアウトプットしたものになります。素人の自分が「リサーチで何が大切か」を学ぶには絶好の一冊だったと思います。 Kindle prime reading で無料で公開されていますので、ぜひ読んでみてくださいね。
参考:プロが教える マーケティングリサーチとデータ分析の基本 著:中野崇
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